2024.01.13
電子部品のはんだ耐熱性の評価について
コラム記事⑩電子部品とはんだ耐熱性に引き続いて、ここでは電子部品の耐熱性を評価するポイントを説明します。
電子部品は実装形態により挿入部品、表面実装部品などに大別され、JISやJEITAのような公的規格の他に部品メーカーにより独自にそれぞれはんだ耐熱性の規格が決められています。2000年以降、Pbフリーはんだの導入によりはんだ付け条件が厳しくなってきたことから電子部品のPbフリーはんだ耐熱性の改善が進みましたが、一部の部品では構造や材質上において耐熱性の低い部品、例えば挿入型小型リレー、フィルムコンデンサー、LEDなどがあります。これらの熱に弱い部品については、それぞれ各部品メーカーがはんだ付け推奨条件として決めているのが一般的で、部品の納入仕様書に「はんだ付け性やはんだ耐熱性及びはんだ付け推奨条件」として詳細が記載されています。
リフローはんだ付け用SMD部品では、一般的なリフロー条件(P/H=150℃~190℃、60sec~120sec、リフロー=220℃以上30sec~60sec、ピーク温度240~260℃)を満足しており、ほぼ問題ありませんが、リード挿入部品では実装基板の仕様によりP/H条件(100~150℃)やDip条件(5~10sec)により異なるので弱耐熱部品のはんだ耐熱性の確認が必要になってきます。
はんだ付け時の熱に弱い部品(弱耐熱部品)には自社のフローはんだ付け条件に合わない場合が多々ありますので部品メーカーと個別にはんだ付け耐熱性に関して協議&検証してはんだ付け条件を設定する必要があります。以下に部品メーカーとの協議方法を具体的に説明します。
★部品メーカーとの交渉手順
①フローはんだ槽の設備、量産条件を部品メーカーに開示し、検証の必要性を理解してもらい、量産条件
における貴重な検証データが得られることを訴求して協力を依頼する
②部品の初期特性測定品を部品メーカーから供給してもらう
③当該部品を量産のフローはんだ付け条件及び若干きつめの条件にてフローはんだ付け処理を行う。使用
基板は、量産基板を流用、または部品メーカ―のテスト基板を用いる※フローはんだ付け条件の温度プ
ロファイルの測定Dip面のレジスト上、当該部品のはんだ接合部、当該部品の部品表面及び内部(素子
温度)、部品面レジスト上
④部品のはんだ付け処理後、はんだ付け前後の特性変化、長期信頼性を双方で評価を進める。はんだ付
け前後の外観、回路上の特性評価はユーザーで行い、部品そのものの評価は評価システムを構築してい
る部品メーカーに依頼するのがベターです。
⑤部品メーカー、ユーザー間で、量産フローはんだ付け条件において部品の熱損傷や特性劣化に問題ない
ことを確認したら当該部品のはんだ付け条件として「納入仕様書」に記載する。開示条件が厳しく部品
メーカーがOKしない場合には、参考条件として納入仕様書に記載してユーザーの責任において運用する
のが良いと思います。
※部品メーカーは、量産のフローはんだ槽を所有している場合が少なく、はんだ耐熱性などの条件は、簡
便な「小型の静止はんだ槽」で確認する場合が多いのでこの様な検証は貴重なデータとなり、部品メー
カーの協力は得られると思います。
※フローはんだ付け処理において、部品が昇温してはんだ耐熱特性上、問題となる場合には、過熱対策と
して、部品本体の熱容量を増して部品の昇温を抑制する手法があります。具体的には、弱耐熱部品本体
を耐熱樹脂などで覆うと昇温を抑制できます。当社のマスクパレット材料(エポキシ樹脂)を加工して
過熱抑制治具として数社に使用されています。
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