2023.10.17
「フローはんだ付け装置の傾斜角度」について
チップ混載基板のチップ部品の未はんだ対策として1980年代後半に開発実用化された、傾斜型W-waveフローはんだ槽が基本構造となり、2000年代以降のPbフリー対応はんだ槽(大気、N2型)に発展してきています。この傾斜角度について考察していきたいと思います。この傾斜角度の由来は1970年代のキャリア式ラウンド型はんだ槽(静止型はんだ槽+リードカット+傾斜型はんだ槽)と考えられます。静止はんだ槽後のリードカットした後に傾斜型フロー槽にて仕上げはんだを行う構成となっていてその傾斜角度は5度程度です。傾斜角度があるのはピールバックゾーンを設けてブリッジを切れやすくするためです。また、静止はんだ槽を用いて手動ではんだ付けする場合に基板を引き上げる際には傾斜をつけて斜めに引き上げるとブリッジが抑制されるのも同様です。
そこで、SM社におけるフローはんだ槽のここ数年の出荷実績を見ると傾斜角度は標準の5度が殆どですが、徐々に4度、3度が増えてきていて2度が2社あるとのことです。また、標準角度5度で納入しても量産検証した上で4度、3度に設定変更する場合があるとのことで低角度化が徐々に進行しているとみられます。
傾斜角度を低角度とした場合のメリット
①ピールバックゾーンのピールバックゾーンのピールバックゾーンの角度を小さくし広く取れることから
CON部品などのブリッジの低減に効果がある
②1次ノズル、2次ノズル幅を広げることでDip時間を長めに設定できるので銅箔厚みのある強電基板など
のスルホール上がりに効果がある
③マスクパレットを使用する際に、パレットの開口部や底面形状、底面とノズルとのギャップが2mm以下
と小さい、噴流高さが高い・・・・等の条件が揃うとはんだがパレットの底面を伝わりP/H側へ流れるとい
う現象が稀に発生する場合があり、傾斜角度が小さいと発生しにくくなる。
④セメント抵抗などの高背部品の傾きや倒れを防止できる
以上のメリットはありますが、ブリッジが切れるということは、接合部のフィレットが低くなるという
ことで接合強度(信頼性の低下)が懸念されることもあるようですが、現在の所のそのような事象は報
告されていません。Pbフリーはんだ合金はSn-Pbより接合信頼性が高いことも一因かなと考えられま
す。
チップ混載基板タイプであって、SOP&QFPの直接Dipはんだ付け、2mmPコネクタが実装される等フ
ローはんだ付けの難易度が高い基板においては標準傾斜角度5度より3~4度の方がブリッジ低減の可能
性がありますので試してみるのも良いでしょう。因みにS社のP型傾斜型はんだ槽は、標準タイプであっ
ても傾斜角度5度⇒4度、3度へ設定変更可能なのでお勧めです。傾斜角度の低角度化によりDip時間を再
測定してフロー条件を確認し、LED、フィルムコン、リレー等耐熱弱部品が過熱にならないように確認
することも必要となります。
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