2023.09.09
「はんだ接合部の寿命予測と市場不良」について
電気製品の市場不良には、要因別に電子部品の不良、回路設計不良及びはんだ付け部の不良などがあります。ここでは、はんだ接合部の寿命に関する考察、市場不良と接合部の寿命予測を説明します。
はんだ接合部の信頼性を評価する場合、使用環境を考慮した加速条件によるヒートサイクル試験(TCT試験例:-40℃,30min ⇔ 125℃,30min)を行うのが一般的です。そして接合部の観察(シワ、クラックの発生状況)を行い、市場不良との照合を行ってそのはんだ接合部の信頼性(合金、接続構造など)の評価を行います。
鉛フリー合金の導入に当たり、各セットメーカー、各はんだメーカーが協力して各種Pbフリー合金に対する接合信頼性の検証を行い、現在の標準合金が定められたのは周知の通りです。電子機器メーカー、車載機器メーカー、産業機器メーカーなどにおけるはんだ付け接合部信頼性に関する評価方法には、大きな違いがなく、基本的には条件が異なるTCT試験結果と過去の市場不良における接合部の状況を比較して評価基準としているようです。
【はんだ接合部の寿命について】
①はんだ接合部のクラックの有無と接合寿命には相関があり,クラックが入り易い接合部ほど寿命が短
いとされており,TCT試験による信頼性評価によって接合寿命の推定が可能となります。
②一般的な電子機器においては,TCT(-30℃30分 ⇔125℃30分等700~1000サイクル)後のはんだ
接合部には,「シワ」や「クラック」が発生します。このレベルは使用環境にもよりますが、概ね8
~10年以上のはんだ接合寿命と言われており、この試験による判定基準として,シワやクラックがあ
っても,接続部が断線に至らなければOKとするのが一般的な判定基準とみられます。
③はんだ接合部における寿命の推定は,TCT評価と加速倍率計算式及び市場解析データの照合により行
われ、各社独自の評価基準を設けているようです。
一般的な加速係数算出式として以下のModified-Coffin-Manson則が用いられます。
【市場不良と接合部の寿命予測】
次に、市場不良と寿命推定の事例を説明します。
1.製品不具合データ
①品名:日本製シーリングタイプ蛍光灯 2000年製 Sn-Pb使用
②不具合状況:不点灯が発生、はんだ接合部を観察するとトランスのリード接合部においてはん
だクラックを確認。トランス重量と発熱によるストレスと考えられる。
③実使用条件: 0℃ ⇔ 50℃ 使用回数:5サイクル/日使用期間 約 8年
2.当該実装基板の加速試験(仮定)
・-40℃,30min ⇔ 100℃,30min 24 cycle/day 2,000 cycle 処理
・1000サイクル前後ではんだのシワが見られ、1,800cycleまで断線無し。
1800~2000サイクルにてクラックによる断線が発生したと仮定。
⇒1,800サイクルまではOK
3.寿命の推定
TCT:1,800サイクル処理後において故障(断線)が発生しなかったとすると、実使用環境にお
ける寿命は 加速係数=7.58(上記の計算式AF)より
・1,800サイクル x 7.58=13644 13644÷(5回x365)=7.5年
TCT試験による接合部のクラック&シワの事例
不具合品の接合部のクラック
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