2023.06.12
「0.5mmP-QFPの直接Dipはんだ付け工法」について
今回は1990年代半ば、ミニコンポのCD基板の実装に導入した0.5mmP-QFPの直接Dipはんだ付け工法についてポイントを説明します。
当時のLSIのパッケージの主体は0.65mmPと0.5mmPであり、リフローはんだ付けにおいては両ピッチLSIが使用されていましたが、フローはんだ付けにおいては0.8mmPを接着剤で固定し他のチップ部品と同時に直接Dipする工法が採用されていました。LSIの高機能化に伴いVer-upされて狭ピッチになり0.5mmP-QFPを他のチップ部品と同時に直接Dipはんだ付けする必要性が高まりました。当時は手はんだ付け対応していましたが、何とかチップ混載はんだ付け工法として可能とすべく、はんだ槽の噴流を主体とした開発を装置メーカーS社とコラボしました。
①ノズルの構成
W-Waveはんだ槽を基本構成としました。1次ノズルを乱流としフラックスや基板から発生するガスを追
い出し、チップ部品の電極にはんだを接触させ未はんだを防止する機能です。一方、2次ノズルは平滑
な波にして1次噴流で発生するブリッジを修正し仕上げはんだ付けの機能です。
②2次ノズルの形状
狭ピッチ多ピンリードのブリッジを抑制するには、ノズルと基板のギャップをなるべく小さくし、噴流
を平坦にして浸漬深さを浅く当てることがポイントとなります。そこで、基板進行方向へのはんだの波
形状を最適化できるようにリアへの流れを可変できるフラップタイプのノズルを新たに設けました。こ
の機構によりピールバック部の流速制御、切れ角度の制御が可能となり、2次波の形状変更の自由度が
高まりQFPのブリッジ低減に大きく寄与しました。
③QFPのDip面への固定
QFPを基板に固定するには他のチップ部品と同様にエポキシ接着剤を多点塗布して熱硬化により固定し
ます。ところが、QFPによってはDip時に落下する事象が発生するものがあり、QFP本体の離型剤の残
渣が影響していました。この現象は現在でもQFPやSOP-ICをDip多用している家庭用機器の制御基板で
も発生しているようです。また、同じ0.5mmPのQFPでもメーカーによりリード幅やガルウィング形状
が異なりブリッジ発生に影響することも判明しました。ガルウィングの高さが低い方が浸漬深さが浅く
なるのでブリッジ抑制には良いようです。
④部分噴射N2システム
当時の産業機器実装基板ではフロン洗浄が出来なくなり、低残渣フラックス+N2雰囲気はんだ槽の無洗
浄システムが主流となりつつあったことからピールバック部へはんだ槽内にて加熱したN2をやんわり吹
き付けるシステムを開発。これは、QFP以外のCONなどのブリッジ低減にも効果があり、各種チップ混
載基板において、N2噴射無しと比べて5~40%のブリッジ改善に寄与しました。
⑤基板設計の対応
QFPのレイアウトは矩形の基板に対して斜め45度配置とし、進行方向後方へはんだが伝わり最後方のラ
ンド付近に余剰はんだを吸収してブリッジを抑制するランドを設定しました。以上の様に、0.5mmP-
QFPを手はんだ付けから直接Dipする工法を開発することにより大幅な工数削減に寄与しました。な
お、このノズルシステムは現在のS社のはんだ槽ノズルに踏襲され各種業界の顧客にて使用されていま
す。
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