2023.05.13
「プリント基板の表面処理とはんだ付け性」について
今回は現在一般的に採用されているプリント基板の表面処理について、過去の事例を踏まえて説明します。
プリント基板の表面処理は銅箔部の酸化や腐食を防止してはんだ付け性を向上することにあります。1975年頃からプリント基板にソルダーレジスト(SR)が施され、当初はエポキシ系の熱硬化型SRでしたが、UV樹脂の開発が進みUVレジストが使用されるようになりました。初期のUVレジストでは密着の問題がありましたが現在では、更に発展し液状フォトレジストや感光性フォトレジフィルム(ドライフィルム)が使用されています。一方、はんだ付け性を確保するための銅箔上の表面処理としては、SR処理工程後に表面処理が施され、ロジン系、はんだレベラー、化成被膜系、金めっき等など基板仕様やコストに応じて使用されています。
- ロジン系プリフラックス処理
コストが最も安いので一般民生機器用基板の処理に広く使用されています。1970年代後半にチップ部品混載実装工法が開発導入され始めた際にロジン系プリフラックスがバリアーとなりチップ接着強度が低下するという事象が発生しました。対策としてロジン系プリフラックスの膜厚を薄くしたり、チップ用接着剤の相溶性を確保したり、また、銅箔のみに形成される化成被膜系のプリフラックス処理を採用した経緯があります。
- 化成被膜処理(OSP処理:Organic Solderability Preservation)
現在では両面&多層基板用として使用されています。チップ混載実装が盛んに導入された1980年代にはOSPという言葉がなくS化成の水溶性プリフラックス処理「グリコート」が一般名でした。銅箔上にのみ撥水性被膜を形成するのでチップ部品混載実装基板にはチップ部品接着強度が確保できて落下の問題は皆無でした。当時の化成被膜処理は耐熱性が低くチップ接着剤の硬化後には銅箔の変色がみられましたがフローはんだ付け性は何とか確保できました。その後、両面リフロー対応の化成被膜系の開発が進み、現在では両面リフロー+フローはんだ付けにおける耐熱性も確保されるようになり、車載用基板にも多用されるようになっています。両面リフロー工法の一般化したころからOSP(Organic Solderability Preservation)と言われるようになったと記憶しております。
- はんだレベラー(HAL:Hot Air Leveler)
HALは産業機器や車載用基板を中心に採用されてきましたが、基板の微細化に伴いはんだコーティングの厚みのバラツキがリフローはんだ付け品質に影響があるということで産業機器基板や車載用基板ではHAL処理からOSP処理へのシフトが進んでいます。HAL処理のはんだ厚みが極薄などのバラツキがある場合、両面リフロー時の酸化が進みその後のフローはんだ付け工程においてスルホールの上がり不良が発生したりします。また、はんだ被膜下のSnCu合金層の劣化によりはんだを弾く現象もみられます。そのためHALの膜厚品質や基板保存条件には注意が必要です。
- 金めっき処理
金めっき処理基板では主に接点を有する小型基板(モバイル用基板)を中心に採用されており、また、海外製基板では金めっき処理基板が多用されているようです。めっき皮膜の構成はCuパッド上にNiバリヤーめっきを施してからAuめっきを施します。Auめっきの厚みは、はんだ付けする際にAuめっき皮膜がはんだ中へ拡散溶出してNi被膜とSnが合金層を形成できる程度の薄いAuめっき皮膜とするのがポイントです。Auめっきが厚いとAuめっき皮膜が残りSn-Au合金層を形成する場合には接合強度が極端に低下するためです。
以下にプリフラックス処理の特徴を示します。
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