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コラム記事(No.23) 「シリコーン化合物の電子機器への影響」について

2023.03.25

「シリコーン化合物の電子機器への影響」について

今回は1970年代後半に発生したシリコーン化合物による電子機器への影響について記述します。

1970年代後半から1980年代前半にかけてラジカセの販売が隆盛を極めていた時代です。

カセットデッキ部のメカニズムにはどのメーカー製もコスト&性能の関係で小型のブラシ付きDCモーターが使われていました。ブラシの接点構造は円筒型か扁平型になりますが、この接点にスパークエネルギーにより

酸化物が付着して回転不良となる事象が発生しました。この酸化物を分析するとシリコーンの酸化物(SiO2)であり、どのようなメカニズムで付着するか当時は難問でした。シリコーンの影響については当時は技術情報がほとんどなく、ベル研の文献がある程度でした。そこで、シリコーンの発生源がパワートランジスタに用いる放熱グリースにあるとの予測のもとに実機での評価を進め、ガスクロ分析を駆使した再現検証によりラジカセの内部のシリコーン濃度が数百ppm以上になるとブラシ付きDCモータへの影響が出ることを見出しました。

その発生メカニズムは以下の通りです。

   ラジカセの電源投入により、パワートランジスタのシリコーン放熱グリースの温度が上昇し、低沸点成分

 (低分子シロキサン)が揮発する

   揮発したシリコーン低沸点成分がラジカセ内部に充満する。

   充満したシリコーン低沸点成分がメカデッキのDCモーターの調整用孔からモーター内部へ侵入し摺動ブラシ

  のスパークにより酸化して接点に付着する。酸化物が付着して摺動抵抗が変動してモーターの回転不良とな

  る。ラジカセメカデッキ部のモーターの回転数が変動するとワウ&フラッターが悪化し音程が変化して聞き

    にくくなります。恒久対策としてグリースメーカーへ低沸点成分を除去する処理を依頼して納入するように

    なりDCモーターの回転不良は改善されました。

  また、このほか、2010年代半ばに経験した成型機に使用するシリコーン離型剤の影響による制御基板のリレ

    ーの接点障害があります。樹脂成型工程において、成形品の型離れを良くする目的で金型へシリコーン離型

    剤をスプレー噴射する場合があります。噴射したシリコーン離型剤の一部が成型機の制御ボックス内へ侵入

    して制御基板のリレー部品へ入り込んでリレー接点のスパークエネルギーにより接点に炭化物等C,Si)が付

    着し接触抵抗が高くなり接点不良となったものです。

以上の様に、シリコーン化合物の電子機器への影響は、低沸点成分が閉塞空間に入り込み、スパークする接点

のある部品に影響すると考えられます。現在では各シリコーン材料メーカーから電子機器用シリコーン材料として低沸点成分を低減したシリコーン材料が販売されております。

また、材料メーカーや電子部品メーカー(リレー等)の技術資料には使用上の注意点として「シリコーン材料の電子部品接点への影響」として詳細が記述され ています。

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