2022.12.26
「はんだ付け部の市場不良(Ⅰ)」について
電気製品の市場不良には、要因別に電子部品の不良、回路設計不良及びはんだ付け部の不良に分けられます。
ここでは電気製品に使用された制御基板のはんだ付け部の不良について筆者の体験事例を記述します。はんだ
クラックや導通不良、接合強度低い・・・・といった「初期不良」です。
① 市場出荷後1~2カ月で発生したはんだクラック(写真付き)
FL管など表示デバイスのはんだ接合後において、基板取り付け時に多少の傾きがあると筐体への取り付けやネジ締め等を行った際にはんだ接合部に微小なストレスが加わります。はんだは微小なストレスが長時間掛かると容易にクリープ変形しますので市場出荷後1~2か月後にはんだクラックが発生し導通不良となりました。また、パワーTrのヒートシンクのネジ締めは基本的にはんだ付け前に行うのですが、傾き修正のためはんだ付け後に行ったことにより市場出荷後2カ月ではんだクラックが発生してしまいました。 「はんだ接合部へはストレスを加えてはいけない」といった格言がありますが、まさしくその通りであり、製造工程~市場にて実践してしまったことになります。
② ミニモールドチップトランジスター(MMTr)の導通不良(写真付き)
チップ混載実装基板において、MMTrのコレクタ電極部に未はんだが発生しはんだ付け直後は電極のめっきにより導通しており、はんだ付け後のICTインサーキットテスター検査や製品検査では検出できずに出荷されしまい2か月後に導通不良となりました。1990年代当時は画像検査が導入されておらず、目視検査もすり抜けてしまい不良となったものです。現在のはんだ付け実装後の検査工程では、画像検査やICTが一般化しており、この種の不良は皆無と思われますが、読者諸兄の中にはご経験があるかと思われます。
③ 金めっき基板のセラコンチップ&MMTrの落下
小型LCD表示部品を搭載する家庭用小型電子機器において、LCD表示部と基板の接続に異方導電性ゴムを使用しますが、基板側に接点機能があるので金めっき処理するのが一般的です。そこで、金めっき基板にQFP-LSIや各種チップ部品をリフロー工法によりはんだ付けを行います。金めっき基板は一般的には濡れ性が良く接続的には問題が生じにくいのですが、下地のNiめっきや金めっきの性状により不濡れ現象(はんだ弾き、ブラックパッド)が稀に発生することがあります。接合メカニズムは、はんだ付け時には金めっき皮膜をはんだ中へ全て拡散させ下地NiとSnとの合金層の接合にするため金めっき厚みを薄く(いわゆる金フラッシュめっき)します。この構造により金めっき厚みが極端に薄くなると下地のNiが変質しやすい、また、めっきプロセスにおいてNi被膜に酸化劣化などがあるとはんだ付け時に不濡れが発生します。当該のセラコンチップやMMTrの落下(基板パッドからの剥離して落下)は、はんだ接合強度が不濡れ現象により極端に弱く、小型電子機器の使用時の衝撃によりセラコンチップやMMTrが落下したものです。なお、2000年代後半に発生したもので製造は中国の委託製造、やはり、金めっき基板のめっき処理に問題があったということで極端な例を説明しました。現在でも、産業機器のECU基板の一部ではAuめっき基板を使うことがあり、リフローやフローはんだ付けにおいて接合部のフィレットは問題ありませんが、ランド(パッド)一杯にはんだが濡れ広がらない事例も散見されるようです。
なお、金めっき基板のはんだ付け時おいては、前述のようにNi-Sn合金層となるので基板たわみストレスにより部品接合部がペキペキと剥離することがあるので基板分割では要注意です。特に、Auめっき厚みがありパッド側に残るとAu-Sn合金層となり極端に接合強度が弱くなります。
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