2022.12.10
電子部品の市場不良(Ⅱ)について
ここではコラム記事No.11に引き続いて筆者の体験から電気製品に使用された電子部品の工程不良と市場不良について記述します。
① リード挿入型LEDの不点灯(実装工程内不良)
1990年代にコストダウンを目的に海外製LED(台湾製)をオーディオ製品に導入し始めましたが、フローはんだ付け後の検査工程にて高い発生率で不点灯が発生しました。このLEDは自動挿入タイプであり、これまで日系メーカー品では全く不点灯が発生していませんでした。そこで、不点灯ですからワイヤーボンディング部を観察しましたら完璧なクラックが入っており、日系メーカー品のボンディング構造と比較してクラックが入りやすい構造であることが判明しました。部品評価時にはバルク梱包サンプルのため自動挿入は省略し、手挿入とフローはんだ付けは行いましたが、自動挿入評価を省略したのが敗因でした。不点灯のメカニズムは、自動挿入によるクリンチストレスが残留して、フローはんだ付けの際にLED素子の内部温度がエポキシ樹脂のガラス転移点(LED用エポキシ樹脂は約140℃前後)を超えることから残留ストレスに負けてワイヤーボンディング部にクラックが入り不点灯となったものと推測しました。日系メーカーに確認しましたら推測の通り、自動挿入タイプはフローはんだ付けによる不点灯の問題があるのでワイヤーボンディング構造を工夫しているとのことでした。やはり、単純なLEDのような部品であっても新規参入した海外メーカー品には要注意であると肝に銘じた次第です。また、新規電子部品の採用評価時には、量産プロセスをシュミレーションして自動挿入&装着、フロー&リフローはんだ付けを一通り行うことが重要であることを改めて認識しました。
② アルミ電解チップコンデンサーの液漏れ(市場不良)
1990年代前半、ゴム封口型アルミ電解チップコンデンサーが開発実用化され、当初、小型カセットプレーヤーに採用され、その後、リフロー工法の民生機器に採用が拡大しました。導入初期にシンガポールなど高温高湿度地域で販売され使用期間1~2年後に小型カセットプレーヤーやハンディビデオカメラにおいてアルミ電解チップコンデンサーの電解液が漏れて実装基板の銅箔が腐食断線する問題が発生しました。コンデンサーメーカーの解析では、日本国内では発生がなく、追跡検証の結果、各種要因(高湿度、封口ゴムの材質、電解液の成分)が重なると発生することが分かりその後高湿度の環境においても問題がなく対策されました。そして、このゴム封口型アルミ電解チップコンデンサーはリード型電解コンデンサーと同等以上の信頼性が確保され、現在では民生機器のみならず産業機器や車載機器にも使用され、一部の民生機器では両面リフロー工法において2度リフローはんだ付けに耐える性能が確保されています。余談ですが、アルミ電解チップコンデンサーは、当初、積層テフロンゴム封口型V型アルミ電解チップコンデンサーとしてM社から開発販売されましたが、コストが高いということから通常のゴム封口型チップコンデンサーの開発を要請し、M社が関連パテントを公開しコンデンサー工業会として共通形状のゴム封口型アルミ電解チップコンデンサーが数社から順次開発実用化されました。導入当初はリード型電解コンと同様にPVCチューブ被覆でしたが、リフロー時の熱損傷(PVCの割れ)があり、絶縁塗料タイプへ変更されました。
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