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コラム記事(No.11) 「電子部品の市場不良(Ⅰ)」について

2022.10.24

「電子部品の市場不良(Ⅰ)」について

   ここでは筆者の体験から電気製品に使用された電子部品の市場不良について記述します。いずれも製品のコス

   トダウンを目的に海外製電子部品の使用を開始した1990年代に発生しています。


   チップトランジスターの素子クラック

1990年代に製品のコストダウン(CD)目的に海外製のミニモールドチップトランジスタ(MMTr)を評価導入したところ、運悪く、特定のロットから不具合が多量に発生しました。部品メーカーの見解では「チップ混載実装工法において、フロー条件に不備があり不具合になった」とのことでしたが、チップ混載工法はチップ部品の導入以来10年以上の実績があり、フローはんだ付けにおける熱負荷ではMMTrは全く問題がありません。そこで、Trチップの封止樹脂を溶解して内部を調査しましたら不具合のTrは全てに素子クラックが入っていました。そこで、Trの製造工程においてクラック予備軍が潜在的に入り、はんだ付け(チップ混載工法)~最終検査工程では検出されずに市場に導入され、顧客の使用環境にて徐々に潜在的なクラックが顕在化して不具合になった」と推測し、ウェーハーからピックアップする際の突き上げピンの高さ調整不備を疑いました。そこで、部品メーカーに「工程変更の有無の調査」を依頼したところ、複数台で使用しているボンディングマシーン工程の一部で装置の変更があったとのこと。ウェーハーから個々のTrチップをピックアップする際に下側からピンで突き上げてピックアップしてリードフレームに搭載しますが、このピン突き上げの工程において調整不備により微小なクラックを発生させたとのこと。・・・・ということで当該部品メーカーの責任を認めましたので、使用数量も数百万個と大きいことから賠償問題になりましたが、部品メーカーもしたたかであり、賠償金請求には応じず、「今後、Tr部品をご使用いただく条件でさらなるコストダウン対応をします」・・・・とのことで一件落着、資材担当者はさらなるコストダウンできるとあって大満足でした。


   セラミックチップコンデンサーの絶縁不良

チップ混載工法やリフロー工法に使用する16082125型セラミックチップコンデンサーのコストダウンを目的に海外製セラコンチップを評価導入しました。ところが、部品評価や工程監査においては全く問題がありませんでしたが、導入後1~2カ月経過したらセラコンチップの内部電極間の絶縁不良(ショート)が多発しました。要因は、評価用サンプルは念入りに選別したサンプルだったこと、工程監査人の目利きが節穴だったこと(工程内不良率が日系メーカーに比べて1~2桁悪いことが後で判明)です。セラコンチップの容量拡大のために誘電体厚みが薄くなり微小異物を巻き込むと内部電極間の絶縁性が低下することがあり、スクリーニングプロセスにて潜在的な不良品を検出しきれない製造工程の貧弱さがありました。そこで、資材部としては品質改善と今後の使用継続を条件にさらなるコストダウンを要求したのは言うまでもありません。

以上のように、1990年代の海外製電子部品の品質状況の一端を紹介しましたが、現在の海外部品メーカーは技術力や製造品質も改善が進みこのような部品不良の発生は減少しているものと考えます。

国内外問わずですが、特に新規部品の導入の際には念入りな部品評価や工程監査を行うことが肝要かと思います。

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