2022.08.27
「 電気製品の市場不良」について
一般的に「信頼性とは」、「その製品が、使用期間中、故障しないで稼働する性質や確率のことを言います。製品の信頼性が高いとは「故障しないで使用できる期間が長い」ということができます。ここでは筆者の体験から電気製品の信頼性について考察したいと思います。
■家電製品を5年~10年程度の使用期間中に運悪く故障する場合がありますが、修理用補修部品に関して、製品カテゴリーごとに部品の保有期間(製造終了からの期間)が公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会にて以下のように決められています。
・冷蔵庫、エアコン:9年
・テレビ、電子レンジ:8年
・炊飯器、洗濯機、掃除機:6年
故障事例①
1985年製造の丸形蛍光灯が使用期間8年位で、チラチラと時々不点灯が発生しました。もちろん使用はんだはSn-Pb共晶はんだであり、そこで、内部の制御回路を覗いてみたら、トランスのリード接合部にはんだクラックが発生していて、これが時々不点灯を発生させていたことが判明しました。クラックの発生部分のはんだフィレット高さは十分でありましたが、フラックス残渣や紙フェノール基板の変色があり、毎日使用時の温度サイクルに起因するクラックと考えられます。クラック発生の要因は温度サイクルによるSn-Pb組織の粗大化(強度低下)+トランスの重量によりクラックに至ったと考えられます。本はんだクラックによる故障は8年間使用できたので摩耗故障の範疇に入ると考えられますが、穿った見方をすると8年位で故障に至る設計(タイマー)かもしれません。そこで、このはんだクラックを手はんだ付けで修正してしばらく使用していましたが、LEDシーリングライトが販売されてきたので交換したのは言うまでもありません。
故障事例②
使用年数8年位のCRT-TVにおいて、時々画面のちらつきが発生し筐体を叩くと直る現象が発生しました。この現象は多くの方々がご経験している現象かと思います。そういえばNHKの朝ドラ「カムカム・・・・」にもテレビの筐体を叩いた映像が流れていました。内部の制御基板を観察したところ、フライバックトランス(FBT)のリードにはんだクラックが発生しており、はんだ接合部付近も紙フェノール基板の変色がありました。これは毎日の使用によるはんだ接合部の温度サイクル(常温~80~100℃)によってSn-Pbはんだの組織の粗大化が進み接合強度の低下+FBTの重量ストレスからクラックに至ったものと考えられます。これも寿命となる摩耗故障の範疇に入ると考えられますが、運が悪ければ、はんだクラック+高電圧+使用年月による埃の堆積によりクラック部が放電して発煙発火が生じる可能性がありました。
ちなみに、大型CRT-TVのはんだクラック部のスパークによる発煙発火~火災事故は1990年代に問題となった市場不良です。対策として、Sn-Pb共晶はんだにNiやAgを添加、高電圧+重量部品の接合部にハトメを使用するなど接合部の強化&延命化が図られたました。このCRT-TVの発煙発火による住宅火災問題がトリガーになり、PL法(製造物責任法:Product Liability)が制定されたといわれております。
■以上のような経験から、民生用電子機器の補修部品の保有年限6年、8年は
妥当なところかなと実感しています。
あらゆる電子機器や車載、産業機器には制御基板が使用されますので「たかがはんだ付け、されどはんだ付け」
・・・・と言われますが、はんだ付け技術は各種製品の寿命(信頼性)を左右するベーシックな技術であると思います。
※製造物責任法(PL法):製造物の欠陥によって、生命、身体、他の財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して、製造物責任に基づき損害賠償を求めることができる法律です。1995年7月1日施行。
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