2022.08.27
はんだ合金種と信頼性について
電気・電子機器などの特定有害物資の使用制限に関するEUの法律(RoHS指令:2003年2月に最初の指令(通称RoHS1)が制定、2006年7月に施行)が契機となり、1990年代後半から、各はんだ材料メーカーや大手電機メーカーにおけるPbフリーはんだの信頼性などの評価が進みました。そして、業界各社の調整の上、Pbフリーはんだ標準合金としてSAC305(Sn-3.0Ag-0.5Cu)が決められました。
また、はんだ材料コストの観点から低AgやSn-Cu合金の採用が進み、現在では、各業界の実装基板の用途(信頼性やコスト)に応じて各種Pbフリーはんだ合金が使用されています。最近の傾向として、SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」に関連して「低融点はんだ」やEVなど車載機器の信頼性向上の観点からSAC+α合金(Bi,In,X添加合金)の採用が進みつつあります。
■はんだ合金の接合信頼性を評価するポイントとして、製品の実使用状態を考慮した環境条件にて評価する必要があります。一般的にはヒートサイクル試験や振動試験(高温振動)、恒温高湿試験(通電)などが行われます。
代表的なヒートサイクル試験条件は以下の通りで、民生機器、産業機器、車載など各社で行われており、判断基準は業界や企業により多種多様のようです。
① TCT:気相試験(-40℃/-30℃,30min ⇔ 100℃/125℃,30min)
② 業界各社により異なりますが、概ね1,000~3,000サイクルを行い1,000サイクルまででのクラック有無、
はんだクラックが発生し導通不要となるまでのサイクル数の確認、3,000サイクルまで処理してクラックの
発生状況を観察・・・など各社で判定基準が異なるようです。
■ここでは、筆者が2000年頃実施した液相のTCT試験事例の概要を説明します。
① はんだ合金種:Sn-Pb共晶はんだ、Sn-3.0Ag-0.5Cu、Sn-0.7Cu
② 基板:紙フェノール t=1.6 片面Cu箔
③ 部品:コネクタ10Pin両サイド2pinをはんだ付け(内側8pinは抜いてコネクタと基板の熱膨張差による応
力をはんだ接合部へ集中させる)
④ はんだ付け:自動はんだ付け装置 250℃、5sec
⑤ TCT条件:液相 エチルアルコール+ドライアイス浸漬(-60℃,10min)
⇔沸騰水浸漬(100℃,10min) 1,000サイクル
⑥ 結果:ランドの円周1/4以上のクラックが発現するまでのサイクル数
Sn-Pb:400~500サイクル
Sn-3.0Ag-0.5Cu:600~800サイクル
Sn-Cu:500~700サイクル
■次に、業界としての正確な統計はありませんが、筆者のこれまでの知見から判断しますと各種合金の接合信頼性、使用比率及び適用カテゴリーを比較すると大雑把に言って以下のようになると考えられます。
特にコストや接合信頼性が十分に確認された結果、低AgはんだやSn-Cuはんだの採用が広まっている印象を受けます。
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